藤原先生

 

 こんにちは。お手紙がおそくなってしまってどうもすいません。

 先日は写真などを送っていただき、どうもありがとうございました。ようやくパソコンの操作の仕方が分かり、写真を見ることができました。

 

 安良里での4日間の実習のあと、インドに行き、またものすごい刺激を受けました。何もかもが日本と違い、自分が当たり前だと思っていること(例えば、人間は平等であるべきだ、平等でなければならないといったような考え方そのもの)がどんどん覆されて、驚いてばかりでした。

 インドでは大学の先生の教え子や友達など、計16人で行ってきたのですが、電車で移動中、医療専門学校の学生と話をする機会がありました。その時、私は数日前に藤原先生と話したことを得意げに(!?)色々と話してきました。中でも、最も強調したことは、(それは同時に私が最も強く感じたことなのだと思います。)「患者さんは自分が1番不安に思っていることを、自分からは言い出さない」ということでした。みんなもその話に強く共感して、「医師に『あなたは本当はこんなことが不安なんじゃないですか』と聞かれることによって、例えそれが見当はずれだったとしても、患者さんに『この医者は自分のことを考えているんだな』と感じてもらえるのではないか」といったような話をしました。

 

 さて、ここからは安良里での感想を書きますね。

 

 研修の中で1番楽しかったのは、やはり、診察室での先生と患者さんのやりとりを見られたことです。特に私は、初めての体験だったので、ぜんぜん退屈なんてすることなく、内科、外科、精神科、耳鼻科、眼科、皮膚科・・・をこなしていく先生を見ていました。椅子の工夫やカルテの工夫、また、白衣を着ていないことや患者さんとの話の進め方などをなるほどなあと思いながら見ていました。

 また、パソコンの中のカルテを見させてもらい、あの会話の積み重ねがこのようにまとめられていて、病気の原因をさぐる手がかりになるというのがとても印象的でした。3ヶ月ごとに高血圧になるのが仕事が原因だったというお話が特に心に残っています。ちなみにこの話もインドで友達にしてきました。

 

 また、リハビリの部屋(何て言うのでしょうか)で患者さんとお話できたのがとても良かったです。そこにいる人たちは、患者というよりは立ち話をしている近所のおじさんおばさんといった感じで、楽しくお話が出来ました。

 

 待合室でのことは、患者さんが少なかったためにあまり印象に残っていません。ただ気になったのは、診察室での会話がすべて聞こえてしまったことです。また、心電図などをとるところと診察室がカーテン1枚でしか仕切られていないことも気になりました。実際、女性の患者さんに聴診器を当てている時、男性の患者さんがカーテンを開けて入ってきてしまった時、「ああこれは何とかしなければいけない」と思いました。予算の都合などもあるとは思いますが、少しずつ改良していけたら・・・と思います。

 

 薬局での薬剤師さんとのお話も、とても楽しかったです。まあほとんどはぐちを聞いていたような感じでしたが、その分本音を聞くことが出来、現状を知ることが出来た気がします。私が「薬剤師」と聞いてすぐに思いつくのは「チーム医療の担い手の1人」ということです。そこで、「処方された薬に関して、何か医師に意見を言うことはありますか」といったようなことを聞いてみました。答えはノー。しかも、そんなこと考えられないといった口調でした。患者さんに薬の説明をしても「そんなこと分かっているよ!」と怒鳴られることもあると言っていました。「やっぱりそうか・・・。」と思う反面、「それじゃあ薬剤師の役割って何なんだろう。」と少し暗い気持ちになりながら、考えざるを得ませんでした。

 また、少人数ではあっても、どうして薬が変わったのかなどまったく分かっていない患者さんもいらっしゃるそうです。藤原先生みたいにきちんと説明をされていても・・・と、たっぷりと現実を見せつけられてしまった、薬局での時間でした。

 

 訪問診療は、診察室でよりも、ずっとたくさん患者さんそのものやその人の人生などが見えてとてもいい経験でした。いやあ世の中には本当にいろんな人がいるんですねえ。その時は早くここから逃げたいと思ったけれど(ごめんなさい。正直な話、心の中ではそう思っていました。)、今になってみるとあのおじいさんはどうしているかなあと時々思い出します。おばあさんもいろいろ悩んで苦しんでいるのかもしれないと思ったりもします。患者さんの家を大掃除をするという先生の判断は、いい結果がでたからよかったけれど、医師はどこまで患者さんの生活に立ち入っていいのか、患者さんとどの程度の距離を維持するのがベストなのかなど考えさせられました。本当に難しい問題ですね。

 

 あと、もし時間があれば、看護婦さんや受け付けの方、また、救急救命士さんともお話がしてみたかったです。他の医療従事者の目には藤原先生はどう映るのかなんて、とても興味のあることでしたから。(笑)

 

 今、思いつく限りのことはすべて書きました。失礼なことも書いてしまいましたが、今現在の自分が素直に感じたことです。お許しください。

 

 もう少し医療のことが分かるようになったら、また是非研修させてください。私の友達にもこの話をしたら是非行ってみたいと言っていた子がいるので、もしかしたら連絡があるかもしれません。その時はよろしくお願いします。

 

2002年4月4日

浜松医大1年       ○○○○

 

 一緒に送ったお菓子は大学の近くにある、おいしい!と有名なケーキ屋さんのものです。1つは病院で、1つはご自宅でどうぞ。みなさんにもよろしくお伝えください。